『蠅の帝国』『螢の航跡』箒木蓬生著
二冊の本を紹介します
新潮社 文庫790円 新潮社 ハードカバー2000円
あまり考えないで借りたら文庫とハードカバーでした。
どちらも同じく従軍医師(軍医)の手記という体裁に統一されたものです。
軍医は元開業医師や医学校・医学部・医専卒業あるいは早期卒業の医師など様々です。
一般兵隊より出世は早くおおむね下士官から将校と言った身分で従軍し、
各地で直接の戦闘はしないものの兵士の怪我の治療や、伝染病・飢餓との戦いが手記として淡々と綴られています。
その冷静な観察と当時の状況が胸に迫るものがあります。
従軍先もニューギニア、ビルマ(ミャンマー)、中国、満州、朝鮮、樺太、フィリピン、沖縄、本土などです。
太平洋戦争という名前が適切なのか日本という国が大きく太平洋、東アジアで戦争をしていたことが理解できます。
その内容は軍医である私の視点で克明に綴られています。
もちろん細かいところでの思い違いもあるでしょうが、軍医の見た戦争とは何かを伝えてあまりあるものがあります。
戦争と言えば最近の話題は従軍慰安婦問題あたりですが、この本でも出てきますが戦争はそれだけではない、
人が戦闘ではなく病気や栄養失調で死ぬ人の方が多いと言う事実が解ります。
多分戦争を始めた人たちは兵站という意味を理解していなかったのではないか、
インパール作戦やニューギニアの話は複数の軍医がそれぞれ記録していますが信じられない状況だったことが解ります。
そんな中でも全力を尽くし職務を全うした彼らを責めることは出来ないでしょう。
満州・樺太での一般人が巻き込まれて行く状況や、戦争が終わっても帰国がかなわず死んで行く人たち。
捕虜収容所で重労働をする毎日、帰国する日を夢見る日々。等々。
表題作の蠅の帝国の意味は広島の原爆病調査で語られますが、
東京大空襲(の話もあります)とは違った死体が蠅を増やしたと言う意味が分かって愕然としました。
小さい頃聞かされた、あるいは本や雑誌などで聞いたり読んだりした話が、今回改めて確認できたような気がしました。
皆うわさとして聞いたような話は、すべて有った事だったのだということが解りました。
最近はこのような情報が無くなってきている事から、また戦争に荷担して行くような方向性に進まなきゃいいのだがと思います。
この本を読めば関係ないと思っている人が、いともたやすく戦争に巻き込まれて行くのが解ります。
何とかそんな道に進まなければよいのですが。
室蘭の艦砲射撃のはなしと、樺太郵便局の交換手の話もありました。
もっとたくさんの人の手記を箒木蓬生さんの文章で読みたいと思いました。
纏まりのない紹介になりましたが戦争とは何かという疑問が涌いたらまた読みます。
螢の航跡にある作者あとがきから「戦争の実相とは、つまるところ、傷つきながら地を這う将兵と逃げ惑う住民、
そして累々と横たわる屍ではないのだろうか。軍医はその前で立ちすくみ、医療に死力をふりしぼりながら、
ついには将兵や住民と運命を共にしたのだ。」こんな事を何度も繰り返すのは愚か者です。
読み終わって2週間経ちようやく紹介を書いていますが、まだ平静ではいられません。
新潮社 文庫790円 新潮社 ハードカバー2000円
あまり考えないで借りたら文庫とハードカバーでした。
どちらも同じく従軍医師(軍医)の手記という体裁に統一されたものです。
軍医は元開業医師や医学校・医学部・医専卒業あるいは早期卒業の医師など様々です。
一般兵隊より出世は早くおおむね下士官から将校と言った身分で従軍し、
各地で直接の戦闘はしないものの兵士の怪我の治療や、伝染病・飢餓との戦いが手記として淡々と綴られています。
その冷静な観察と当時の状況が胸に迫るものがあります。
従軍先もニューギニア、ビルマ(ミャンマー)、中国、満州、朝鮮、樺太、フィリピン、沖縄、本土などです。
太平洋戦争という名前が適切なのか日本という国が大きく太平洋、東アジアで戦争をしていたことが理解できます。
その内容は軍医である私の視点で克明に綴られています。
もちろん細かいところでの思い違いもあるでしょうが、軍医の見た戦争とは何かを伝えてあまりあるものがあります。
戦争と言えば最近の話題は従軍慰安婦問題あたりですが、この本でも出てきますが戦争はそれだけではない、
人が戦闘ではなく病気や栄養失調で死ぬ人の方が多いと言う事実が解ります。
多分戦争を始めた人たちは兵站という意味を理解していなかったのではないか、
インパール作戦やニューギニアの話は複数の軍医がそれぞれ記録していますが信じられない状況だったことが解ります。
そんな中でも全力を尽くし職務を全うした彼らを責めることは出来ないでしょう。
満州・樺太での一般人が巻き込まれて行く状況や、戦争が終わっても帰国がかなわず死んで行く人たち。
捕虜収容所で重労働をする毎日、帰国する日を夢見る日々。等々。
表題作の蠅の帝国の意味は広島の原爆病調査で語られますが、
東京大空襲(の話もあります)とは違った死体が蠅を増やしたと言う意味が分かって愕然としました。
小さい頃聞かされた、あるいは本や雑誌などで聞いたり読んだりした話が、今回改めて確認できたような気がしました。
皆うわさとして聞いたような話は、すべて有った事だったのだということが解りました。
最近はこのような情報が無くなってきている事から、また戦争に荷担して行くような方向性に進まなきゃいいのだがと思います。
この本を読めば関係ないと思っている人が、いともたやすく戦争に巻き込まれて行くのが解ります。
何とかそんな道に進まなければよいのですが。
室蘭の艦砲射撃のはなしと、樺太郵便局の交換手の話もありました。
もっとたくさんの人の手記を箒木蓬生さんの文章で読みたいと思いました。
纏まりのない紹介になりましたが戦争とは何かという疑問が涌いたらまた読みます。
螢の航跡にある作者あとがきから「戦争の実相とは、つまるところ、傷つきながら地を這う将兵と逃げ惑う住民、
そして累々と横たわる屍ではないのだろうか。軍医はその前で立ちすくみ、医療に死力をふりしぼりながら、
ついには将兵や住民と運命を共にしたのだ。」こんな事を何度も繰り返すのは愚か者です。
読み終わって2週間経ちようやく紹介を書いていますが、まだ平静ではいられません。
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